Pumpkin day

 

 

 

「で〜きたっ」

「ラスティ?」

 

ラスティのえらく機嫌のいい声に端末をいじっていた手を止めて、ラスティの方を向いた。

そこにはかぼちゃのはりぼてを頭からかぶって黒いマントを身に着けたラスティ。

 

「…なにやってんだ?」

「何って、今日はハロウィンだよん」

「ああ…」

 

好きだよなあ…、こいつ。

…お菓子が貰えるから当然か

 

「ミゲルもやんない?」

「は?何で俺が」

「キラってさあ、こんなイベント絶対知らないよね」

「知らないだろうな」

「じゃあさ、当然お菓子も用意してないよね」

「してないだろうな。」

「ってことはさ、必然的にいたずらってことになるよね」

「…なるほど」

「する気になった?」

「変装アイテム、俺のもあるか?」

「もちろん」

 

ラスティの手には耳と尻尾。

狼男あたりだろうか。

ソレをすばやく身に着けて、ラスティと目を合わせて笑った。

 

 

 

 

「あ、キラぁ〜vv」

「うっ…」

 

背中から覆いかぶさられてキラが呻く。

ラスティは抱きついたつもりなんだろうが、キラは標準よりも小さいから、抱きつくよりも覆いかぶさる

のほうが正しい。

 

「もう、いいかげんに…っ」

 

腕を振り払ったキラはラスティに噛み付くかと思ったが、覆いかぶさっているかぼちゃに固まってしまっていた。

眉を寄せたり、大きな瞳をぱちくりさせたり、視線を彷徨わせたり、百面相をしているキラ。

頭の中でどうしようか考えているに違いない。

それが面白くてしばらく眺めていたが、キラと目が合ってしまえば助けないわけにはいかない。

俺はラスティのはりぼて頭をべしんと叩いてやった。

 

「つぶれるだろっ!!」

「はりぼての前にキラがつぶれる。いいかげん離してやれよ」

 

ぶちぶち文句を言いながら、嫌々キラを解放する。

キラは男の癖に柔らかくって抱き心地がいいから離したくないラスティの気持ちも分からないではないんだ…。

 

「で、なんなの!?その格好!!」

 

抱きつぶされそうになった恨みも入ってるらしいキラはご機嫌斜めだ。

反対にやっと、仮装に気付いてもらえたラスティはご機嫌に、にこにこしている。

それがキラの怒りを煽ることになっているのに気付かない。

 

Trick or treat!!」

「は?」

「だ〜か〜ら〜、Trick or treat!!」

「あ、ついでに俺もTrick or treat

「ミゲルまでなにっ!?」

「今日はハロウィンだし〜」

 

機嫌急降下のキラとやたらご機嫌なラスティ。苦笑しかできない俺。

はたから見れば、不思議な光景だろう…

 

 

 

「ふぅ〜ん。君たちもおかし、欲しいんだ?」

 

君たちも?

 

「いや、どっちかっていうと、いたずらしたいなぁと…」

「おかし、あげればいたずらできないよねぇ?」

「そりゃまぁ…」

「じゃあ、これあげるからどっかいってね」

 

にっっっこりとすばらしく可愛らしい笑顔(ただし目は笑っていなかった)で俺と、ラスティの手のひらにころりと

一口チョコレートを転がされた。

 

「…キラがお菓子を持ってるなんて…」

「ラスティ、ここで引き下がれるか?」

「まさか」

「だよなぁ…」

『絶対いたずらしてやるっ!!』

 

 

 

…と、決意したのはついさっきだ。

なのに…もう通算何十回目か(…数えるのも面倒になってきた…)なのに、一向にキラのチョコレートがなくならない。

…何か(誰か)の陰謀と言うか、企みが見えるようだ…

 

「…またなの?」

Trick or treat!!」

「……はい」

 

やっぱりころりと転がされるチョコレート。

俺とラスティは早速ソレを口に入れる。

 

「…キラ、いつもそんなに持ち歩いてるのか?」

「…そうか。この為だったんだ…」

 

ラスティの疑問(俺の疑問でもあるが)にキラは一人で納得してしまった。

 

「キラさん?何がこの為なんだ?」

「なんでもないよ」

「なんでもなくないっての!」

「ああもうっ!うるさーいっ!!イザークに貰ったの!!袋にいっぱい!何か言いながらお菓子をねだるヤツにくれてやれって」

 

……イザークか……

妙な入れ知恵は。

 

「もう!皆して!!僕のところばっかり!!」

 

…キラのところばっかり…?

これを企画したのは俺たちだけじゃないってことか…

 

「み、みげる…」

「んだよ?」

「キラの首筋…」

「くび…っ!?」

 

ラスティに言われてキラの首筋に視線がいく。

緩められた襟から覗く白い首筋。

……そこには。

 

「…キラ、そのキスマーク、誰に付けられた…?」

「え…し、知らないひと…?」

 

…知らない人ねぇ…

 

「ラスティ」

「了解」

「…わぁっ」

 

ラスティが軽々とキラを横抱きに抱き上げる。

俺はキラの首筋を撫でてやった。

 

「…っぁ…」

「消毒が必要だよな。なぁ、ラスティ」

「だよね〜。危機感の薄いキラにもおしおきしなきゃ」

「た〜っぷり可愛がってやるからなvv」

「そうそ。いたずらもたくさん…ね」

「やだっ!ばか〜っ!!」

 

ラスティに抱かれながらきゃんきゃん吠えるキラを無視して俺たちの部屋へ連れ込んだ。

 

 

 

 

 

これ幸いとばかりにいろんなコトをヤりすぎてしまった所為(とてつもなく可愛かった)か、

しばらく、拗ねまくって口すら聞いてくれなかった。

それを宥めるのにラスティと二人がかりでイロイロしたのは言うまでもない。